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Dec 04, 2021

クレイグ・ボンド15年間の軌跡を振り返る

これは ョョョねこ Advent Calendar 2021 および あんふぃとらいと Advent Calendar 2021 4日目の記事です。

Kawaiiのライセンスを持つ00YKKことせっちゃんです。
「バーリアル ステアせずシェイクで―」

Intro

先月のお話。
わざわざ交通費を2万払って大阪に行って、映画観てご飯食べて帰るだけというアホの行動をしてきました。
そこで観た映画が「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」でした。
ジェームズ・ボンド=ダニエル・クレイグの私にとって、クレイグ・ボンド最終作というのはとても感慨深いものがあったので、彼がボンドを演じた15年間を振り返り、思い出に浸りたいなと思ったわけで、この記事が出来上がりました。

クレイグ・ボンドは007を生まれ変わらせた

ダニエル・クレイグが6代目ジェームズ・ボンドに抜擢されたときのことを思い出してみよう。これまでボンドを演じてきた役者は黒髪で、黒目、二枚目でいかにも遊んでいそうな風貌をしていた。そこに金髪で蒼眼のクレイグが颯爽とやってきた。当初はこのこれまでのボンドのイメージと全く異なる配役に多くの人間が首を傾げたが、今思えばこれは15年がけの007シリーズの「復活プラン」の一部だったのかもしれない。

ローリング・ストーン誌が評しているように(というかこの記事もその考察からもろに影響を受けている)「女の尻を追いかける合間に世界を救う男」のイメージが付きまとうMI6のスパイは近年フェミニズムやポリティカル・コレクトネスを掲げる側からは袋叩きに遭っていたし、映画内でも、5代目のピアース・ブロスナンに交代して早々、ジュディ・デンチ演ずるMに「時代遅れで女性蔑視の象徴」と評された。そもそも、この作品の原作は戦中から戦後に書かれたもので、最初の映像化も冷戦真っ只中の1960年代に行われた。ボンドが東側、つまりソ連の中央と直接対峙することはなかった(むしろKGBエージェントと協力さえしていた)が、常にそういったバックグラウンドがあった。だが冷戦は終わり、本当に時代遅れになってしまった。

とはいえ、フランチャイズ作品というのはそうなりがちなもので、たとえ時代遅れでマンネリになっても、ファンはそれも一つの答えだと受け止めただろう。サザエさんやクレヨンしんちゃんのように。
しかし007の制作陣は「新しいジェームズ・ボンド」を作り出すことにした。1作目がイアン・フレミング原作の小説の1作目「カジノ・ロワイヤル」でもあることから、制作陣はこのシリーズを新しく作り上げていこうという意思が見えたし、演出もまた。より原作に忠実であろうとしたのも伺える。

2006年にカジノ・ロワイヤルが公開された頃には、ほとんどのファンが金髪碧眼の新しいボンドを一瞬にして受け入れることができたのではないか。ワルサーPPKを持ち、酒と女が大好物というこれまでの設定はしっかり継承し、クレイグの睨みつけるような蒼眼と体格は制御不能で、どこか狂気を感じる「スパイとしてのジェームズ・ボンド」をより際立たせることとなった。彼の演技にはいかにもなスパイ映画の主役らしい冷血さがあったが、同時に優美さがあった。例えば、ヴェスパーとカジノ会場に向かうエレベーターの中で、便箋の中からスッと拳銃を取り出し、サプレッサーと取り付けるシーンに、実にブリティッシュな爽やかさを感じたのを覚えている。

殺し屋的な優美さだけではなかった。恐怖に怯えるヴェスパーを抱きしめ血を拭うシーンのように、あるいは2作目の慰めの報酬のように恋人を殺された復讐心と任務に忠実であろうとする葛藤の中で何もかもが噛み合わない状況に陥ってしまったボンドには、「消されたライセンス」の時のような人間臭さがあった。

ジュディ・デンチに代わりMを演ずることになったレイフ・ファインズは「クレイグのボンドは現代的」と評す。全く同意だし、もっと言えば、ティモシー・ダルトンのハードボイルドでシリアスなボンドを昇華させたのだと私は思う。

3作目のスカイフォールではこれまであまり触れられてこなかったボンドの過去を詳細に描いた。復帰テストで自身の過去に関する言葉が出たときに、回答を拒みテストを中断してしまったり、アルコール依存症で任務に不適格という結果が出されたにもかかわらず、Mのお情けで合格させてもらうなど、彼のバックグラウンドを描いたことでジェームズ・ボンドというキャラクターにあった人間性により深みが出るようになった。ただの女と酒が好きで優雅に仕事をこなす殺し屋ではなく、彼もまた心に闇を抱えた1人の人間なのだと。
最後は生家スカイフォールを舞台にしてMを護る為に敵と戦うわけだが、最終的には家ごと爆発させて敵を弱らせた。滅茶苦茶ではあるが、ボンドなりの過去の清算なのだろうか。

その後クレイグ・ボンドが対峙した敵は全て裏で繋がっており、それを仕切っていた黒幕が義理の兄、エルンスト・スタヴロ・ブロフェルドだった、という洋画らしい強引な展開になるが、一話完結の多いボンド映画の中ではこれまでなかった、カジノ・ロワイヤルからノー・タイム・トゥ・ダイまで一応は繋がっているのも特徴だった。新米のエージェントから始まり、回を追うごとに年老いていく悲壮を感じされられるのもクレイグ・ボンドの一つのポイントだといえる。

最新作のお話(少しだけ)

さて、ネタバレをしない程度にノー・タイム・トゥ・ダイの話をしよう。最新作では2人の女性エージェントが登場する。CIAのパロマがロングドレスを纏いながら銃を撃ち、格闘するシーンは歴代ボンドガールの中でもっとも美しいと断言できるほど、惚れ惚れするものがあった。
前作スペクターの最後でMI6を辞したボンドの後任の007には、なんと黒人女性が就いた。男顔負けの体格を持ち、再びドラマの中に巻き込まれようとするボンドに向かって「邪魔をしたらただじゃおかない」と言い切った勝ち気なキャラクター、そこにはかつての「時代遅れで女性蔑視的な古い007」の姿はもうなかった。
ノー・タイム・トゥ・ダイは派手なアクションやエレガントな立ち振る舞い、そしてみんな大好きアストンマーティンやQの秘密兵器も惜しみなく登場する、まさにクレイグ・ボンドの集大成とも言える作品だが、現代の「多様性」という要求に対しても模範解答とも言える答えを見せてくれた。

これをもって、ダニエル・クレイグ演ずるジェームズ・ボンドとの15年の旅路は終わりとなる。すでに50代になっているクレイグだが、その年波を感じさせないフィナーレはあっぱれとしか言いようがなかった。私は「過去最高のジェームズ・ボンドはダニエル・クレイグ」と断言できる。この記事で興味を持って頂けたのならぜひ劇場で観てほしい。(過去作はPrime Videoにもあるよ、今のとこ)

最後に、次のジェームズ・ボンドは誰になるのだろうか?ヒントを見つけたので、ここにシェアしておく。

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